めくるめくメルク丸

ゲーム/哲学/人生

『リメンバー・ミー』を観た

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もう1週間以上前のことですが、大人気ピクサー新作『リメンバー・ミー』を観てきました。 

正直、ピクサー映画を観るのってそれほど「血湧き胸踊る」ってわけじゃありません。「ちょっと映画観たいから映画館に来たけど、他に観たいのないから、まあピクサー新作でも観とくか……」って感じで、どちらかといえば「いたしかたなく」「後ろ向き」に鑑賞してきたことが多い気します。といっても、たいていは観賞後、毎回ある程度感動して映画館を出るのですがね(ちなみに近年で一番心打たれたピクサー作品は3年前の『インサイド・ヘッド』です)。

今作においてもそんな自例に漏れず、でした。でも、冒頭『アナ雪』スピンオフ作品『アナと雪の女王 家族の思い出』。こればっかりは「うわ、やっぱやめときゃよかった……」などと心底思っちゃったりして。事前に調べずに行ったので、「寝耳に水」ならぬ「寝耳にアナ雪」だったのです。

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今でも、この約25分のアナ雪スピンオフは「見なくて良かったな」と思ってます。べつにアンチ・アナ雪ってわけじゃありません。エルザの方が好み。そういう問題じゃない。とにかくこんなん作っている余力があったら、その類いまれな技術と財力を本編『リメンバー・ミー』に回す、あるいは全世界待望(らしい)『アナ雪続編』に注ぐべきではないか?と。

まあ、5分くらいなら別にかまわないのだけど、ちょっと気合い入りすぎているんです、これ。余興の域を越えている。こちらも、アナ雪観るためにわざわざ半日空けて映画館を訪れ、開始10分前から缶ビールちびちび飲みながら待ってたわけじゃないんですから。いやいや、だけどじつに無邪気で、美しい、きわめてキュートな(時期外れの)クリスマス短編だったなあ。オラフファンなら絶対必見だお! なにしろ原題は「オラフのフローズン・アドベンチャー」(だったっけ?)だもの。いやいや、それにしても、この凄まじい無駄高クオリティ。……ある意味、超贅沢なのかも知れん。ここはひとつ「もうけもの」と思うべきか。

以下、僕にとって「信用筋」のガチ映画批評家・オノデラケイさんの「そうだよなあ」と頷き度高い記事を貼っておきます。この件に関してご興味ある方はぜひご一読を。

閑話休題(『リメンバーミー』について記す前からすっかり疲れちまった……)。

ああ、『リメンバー・ミー』(メロディ付き)。短編アニメ作品を1本見終えた疲労の後、テンションやや落ちの後、ようやく幕を開けた今作。

まだまだ絶賛公開中の映画なので、ここでは物語を深く掘り下げたり考察することはしません。や、正直言うと、本当はちょっと面倒なだけです。今朝はあまり時間がないうえに、1週間経ったら大筋以外ほとんど忘却してしまったので……。 

ああ、『リメンバー・ミー』(メロディ付き)。

留保なく〜傑作でした〜♩スピーディーかつ、メロディアスかつ、奇想天外〜物語〜。大円団〜カタルシス。てんやわんやの〜後に迎えたエンディング〜まんまと〜周囲の子供たち、ピクサーファンの〜大人たち、私メルク丸〜の涙腺からこぼれ落ちた涙そうそう〜♩

ええ、ええ、泣きましたとも。私という中年男性の内に、無邪気で真っ直ぐで、疑うこと識らぬ小さな少年が未だ存続していることに、それほど驚きはしなかったけど、「そうかそうか」と、謎の得心涙そうそう。

 

ええ、(常人らしく)私はもともと所謂「少年冒険譚」に弱いようです。

先祖代々脈々と伝わってきた因習因果を、音楽への情熱が赴くままに断ち切らんとす、匿名的に少年らしい少年。お供の可愛らしいワンくん(その名をダンテ。大活躍!)。少年とワンくんが向かった冥土の国、その生者の国よりもずっときらびやかで、メキシコという国の本質をえぐり取ったような極上のサイケデリア美術・色彩センス。死してなお、個性溢れるご先祖さまたち一行。おっかな可愛い巨大猫。憎ったらしさ満点のラスボス。

そこに奏でられる生への熱情溢れる音楽、音楽、音楽。やがて少年たちによって、家族に脈々と受け継がれてきた呪い(と言うべきか)が解かれた瞬間、 失われた時間は再び生命と結びつき、時間軸を超えて夏の万緑のように輝き出すのだった。そして少年は自らの血の始原にあったのは「愛」だったと識る。ジュテーム、そんなとこだよ……。

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さて、私はこの映画から何を感じたか?

私たちは、己の心が求める場所に向かうべきなのだ。そして、今の私たちは死者たちによって、生かされ、ここに存在している。そして死者たちもまた、いつだってここにいる。そのことを、フィエスタ(祭り)と音楽は私たちにいつでもリメンバーさせてくれる。

そんな「昔ながらの」メッセージをリメンバーした私は、押し入れで埃かぶっている壊れかけたアコギを引っぱり出して、駅前に出たくなった。弾けないけど。ワンちゃんも飼いたくなった。飼えないけど。だから歌うしかない。リメンバー〜ミー〜♩(しつこい)